保育士不足、そして離職率の高さ。
いまや全国の園に共通する大きな課題です。
人材を“採用する”こと以上に、“定着させる”ことが経営の重要テーマとなっています。
■ 離職の背景にある3つの構造要因
保育士の離職は、単に「給与が低い」「人間関係が難しい」という表面的な問題ではありません。
データから見ると、以下の3つの構造的課題が浮かび上がります。
- 仕事量と感情労働のアンバランス
- 記録・行事・保護者対応など、目に見えない“感情労働”が積み重なり、心理的負担が蓄積します。
- キャリアの見通しの欠如
- 年次や経験を重ねても、役割や評価の基準が曖昧で「自分が成長している実感」を得にくい。
- 組織コミュニケーションの希薄化
- 小規模園ほど対話の機会が減り、孤立感を抱えやすい傾向があります。
これらが重なり、「働く意義の実感喪失」につながっているのです。
■ 定着率を高める3つの理論的視点
- 心理的安全性(Psychological Safety)
- 失敗や意見の違いを安心して話せる環境が、チームの力を引き出します。
- 園長・主任の「受け止める力」が組織文化の要になります。
- エンゲージメント理論
- 「仕事の意義」「自律性」「貢献実感」がモチベーションを支えます。
- 職員が“園の未来を自分ごととして語れる状態”を目指しましょう。
- キャリア・アンカー理論
- 職員が自分の「軸(価値観・強み)」を理解し、それに合った役割を持てる環境づくりが重要です。
これらの理論は、最新の人材マネジメントだけでなく、保育の本質である「信頼」と「共感」にも通じています。
■ 魅力ある園をつくる第一歩
魅力的な園は、特別な施設や給与水準で決まるものではありません。
「人を大切にする仕組み」を持っているかどうかです。
- 定期的な1on1面談やリフレクションの導入
- 若手・中堅・ベテランの強みを活かすチーム設計
- 働き方データの見える化(業務量、残業時間、満足度)
これらの小さな実践が、園全体の安心感と信頼関係を育てます。